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最高裁判所第一小法廷 昭和54年(行ツ)107号 判決

群馬県桐生市西久方町一丁目二番五五号

上告人

腰塚治男

右訴訟代理人弁護士

中条政好

群馬県桐生市永楽町一番一五号

被上告人

桐生税務署長

井出吉雄

右指定代理人

岩田栄一

右当事者間の東京高等裁判所昭和五三年(行コ)第五七号所得税更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和五四年四月一七日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中条政好の上告理由第一点について

所論の点に関する原審の判断は正当であって、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第二点について

控訴審判決に事実及び理由を記載するには第一審判決を引用することができるものであることは、民訴法三九一条の明定するところである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤崎萬里 裁判官 団藤重光 裁判官 本山亨 裁判官 戸田弘 裁判官 中村治朗)

(昭和五四年(行ツ)第一〇七号 上告人 腰塚治男)

上告代理人中條政好の上告理由

第一点 判決に影響及ぼすこと明らかなる法令の違背があること。

一、被上告人は上告人の昭和四六年分同四七年分所得税の更正決定をなすについて、更正通知書に記載したものは、(1)本税の額二、七四六、九〇〇円(昭和四七年分は六、八九七、七〇〇円)、(2)申告による雑損控除は所得税法第七二条に該当しないため更正します(昭和四七年分も同じ)とあるだけである。

二、そこで当該昭和四六年分同四七年分所得税更正処分は、上告人が確定申告をなすに当り、保証債務履行に伴う求償権行使不能に因って蒙った上告人のこの両年度の損失一二、三二四、六七七円(昭和四七年分は一八、一二一、五八五円)の主張を否認され、本件更正処分を受けたことは推認できたが、なぜ損失額一二、三二四、六七七円(昭和四七年分は一八、一二一、五八五円)の税額を上告人が支払うことになるのかその理由が判らない。

これは被上告人が所得税法第七二条の解釈適用を誤ったためである。

第二点 判決に理由を附記しない違法がある。

一、民事訴訟法第三九五条第一項第六号の規定は判決には理由を附記せず又は理由に齟齬があることを、しかも、これを絶対的上告理由としている。

二、附記される理由についての最高裁判例も数多く積み重ねられている。

三、原審である東京高等裁判所第二民事部は昭和五三年(行コ)第五七号事件において昭和五四年四月一七日言渡した判決には、当裁判所の判断も原判決と同一であり、原判決と理由も又同一であると判示しているが、理由としては不備であり違法であるといわざるを得ない。

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